
最近のニュースにおいて話題にあがっている在留資格のひとつ「経営・管理ビザ」とはどのようなものでしょうか。
在留資格は出入国在留管理及び難民認定法の別表1及び別表2において以下のように分類され、日本に在留する全ての外国人の方は、お一人につき必ずいずれかひとつの在留資格をもっていることになります。逆にこの在留資格がなければ不法滞在ということになります。
【在留資格の種類】
別表1の1 | 外交、公用、教授、芸術、宗教、報道 |
別表1の2 | 高度専門職、経営・管理、法律・会計、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、興行、技能、特定技能、技能実習 |
別表1の3 | 文化活動、短期滞在 |
別表1の4 | 留学、研修、家族滞在 |
別表1の5 | 特定活動 |
別表2 | 永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者 |
※上記入管法の規定によるものの他、入管特例法によるもの=特別永住者
【経営・管理】 本邦(入管法では、日本を本邦と呼んでいます)において行うことができる活動とは、
本邦において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動(この表の法律・会計業務の項の下欄に掲げる資格を有しなければ法律上行うことのできないこととされている事業の経営又は管理に従事する活動を除く。)
という風に定義されています。ここで、カッコ書きで除外されているものは、活動は同じでもこの部分については除くとされていますので、考え方としては除外するべきものに該当しないかどうかを先にあてはめてみることになります。つまり、外国の会計事務所が日本国内に事業所を設けて進出したり、海外の国際弁護士等が同じく日本に事務所を新設するような場合は除かれるというこになり、法律・会計の在留資格を先にあてはめるということになります。
経営・管理ビザは、前段の、貿易その他の事業の経営を行いと、後段の、当該事業の管理に従事する活動の二つの活動に分かれていることが分かります。前段では、会社でいうところの出資者などがあてはまり、後段では、会社などの取締役など役員や支配人などがあてはまるということになります。どちらにしても実質的な経営者や役員などがこの在留資格に該当することになります。
在留期間は、5年・3年・1年・6か月・4か月又は3か月となっており、通常は、当初4か月で申請し、設立後に1年に更新するようなケースが多いとされています。
(上陸基準省令による基準)において、
申請人が次のいずれにも該当していること。が求められています。
① 申請にかかる事業を営むための事業所が本邦に存在すること。ただし、当該事業が開始されていない場合にあっては、当該事業を営むための事業所として使用する施設が本邦に確保されていること。 |
② 申請に係る事業の規模が次のいずれにかに該当していること。 イ その経営又は管理に従事する者以外に本邦に居住する2人以上の常勤の職員(法別表第1の上欄の在留資格をもって在留する者を除く。)が従事して営まれるものであること。 ロ 資本金の額又は出資の総額が500万円以上であること。 ハ イ又はロに準ずる規模であると認められるものであること。 |
③ 申請人が事業の管理に従事しようとする場合は、事業の経営又は管理について3年以上の経験(大学院において経営又は管理に係る科目を専攻した期間を含む。)を有し、かつ、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。 |
ニュースで話題になっている500万円という金額は、この上陸基準省令で登場する金額ということになります。しかし、500万という金額だけが独り歩きをするという感じがしないでもなく、②においては、いずれかに該当していることが求められていますので、逆説的に500万あれば通るという論理が前面に出てきたということになるのでしょうか。そこで、入管法第7条に戻って考えると、「我が国の産業及び国民生活に与える影響その他の事情を勘案して法務省令で定める基準に適合すること」の相当性があるかどうかという最終的な関門が審査されるという側面が等閑になっている感がしてきます。省令にあてはまるから我が国の産業及び国民生活に与える影響やその他の事情などを勘案しなくてもいいという訳ではないということはいえそうです。
(申請の際、提出が必要な資料)
①次のイからハまでに掲げる資料 |
イ 事業計画書の写し ロ 当該事業を法人において行う場合には、当該法人の登記事項証明書の写し(法人の登 記が完了していないときは、定款その他法人において当該事業を開始しようとすることを明らかにする書類の写し) ハ 損益計算書その他これに準ずる書類の写し(事業を開始しようとする場合においてはこの限りでない) |
②次のいずれかに掲げる資料 |
イ 当該外国人を除く常勤役員の総数を明らかにする資料並びにその数が2人である場合には、当該2人の職員に係る賃金支払に関する文書及び住民票、在留カード又は特別永住者証明書の写し ロ 資本金の額又は出資の総数を明らかにする資料 ハ その他事業の規模を明らかにする資料 |
③事業所の概要を明らかにする資料 |
④活動の内容、期間、地位及び報酬を証する文書 |
⑤事業の管理に従事しようとする場合には、職歴を証する文書及び大学院において経営又は管理を専攻した期間に係る証明書 |
これらの問題は日本だけの問題ではなく、米国に在留する日本人が突然在留資格を取消されて途方に暮れるという話しもあるようですので、置き換えて考えてみることも必要と感じるこの頃です。
私は、海外に在留する日本人の方々が、異国の地でも暖かく迎えられ幸せな生活を送れることを強く願う気持ちと、日本に在留する善良な外国人の方々も等しく同様に幸せな生活を送れるよう願う気持ちは、ブーメランやブランコのようなもので、両方とも比較するものでもなく、どちらかが重いものでもなく、どちらかが軽いものでもないと思いたいのです。