
現場目線で語るスムーズ相続法
「相続が“争続”になる」——そんな言葉を、最近はよく耳にします。遺産の大小にかかわらず、遺族の間でトラブルに発展するケースは後を絶ちません。私は不動産管理や金銭・財務管理の現場に身を置いていたことや、これだけ歳を重ねたこともあり、相続の問題に何度か立ち会ったことがありますが、その中で見えてきた“ある共通点”があります。それは、トラブルの多くが「登記の前段階」で芽を出しているということです。
「書類上は順調」でも現場は混乱
例えば、ある案件では、亡くなった親の名義のまま長年放置されていた家を、長男が売却しようとしたことから問題が発生するケースです。きちんと遺産分割協議をしているつもりでも、次男や長女との認識にズレがあり、「そんな話は聞いていない」と揉め始めてしまうような場合です。これは珍しい話ではありません。“誰が何を相続するか”という協議が不透明なまま進んでしまい、登記の段階で他の相続人が反対する——そんなケースを私はいくつか見聞きしてきました。
なぜ「登記の前」が大事なのか?
相続登記は、法律的には“結果を記録する手続き”に過ぎません。つまり、その前に「誰が何を相続するか」という話し合いが合意されていることが前提なのです。
ここで重要なのが、以下の3つの“前段階”です。
①相続人調査(戸籍の収集)
意外と忘れがちですが、「本当に全員そろっているか」を確認することは極めて大切です。
異母兄弟や養子など、意外な相続人が現れることも…。
②相続財産の把握(不動産・預金・負債の確認)
「現金は分けやすいが、不動産は難しい」——これは多くの方が感じることで、不動産が絡むと一気に難航する傾向があります。
③遺産分割協議の進め方
感情的な対立を避けるには、“第三者的な立場”を持つ専門家の同席が有効です。
書類だけでなく、「空気の交通整理」も行政書士の役割の一つだと私は思っています。
実務経験が“現場対応力”を生む
私は信金勤務経験の他、不動産管理で通算13年、会計事務所で4年、さらにや工場、ケーブルテレビ局での経営企画、運輸など多業種を経験してきました。それゆえに、「机上の理屈」ではなく、実務と人間関係の機微を踏まえたアドバイスができると自負しています。
「家族だから言えること」は、時に「家族だからこそ言えないこと」にもなります。だからこそ、“感情のクッション役”としての行政書士の存在意義が、今の時代は一層大きくなっていると感じます。
トラブルを防ぎ、“想い”をつなぐために
相続とは、財産を受け継ぐだけでなく、「その人の人生をどう引き継ぐか」を考える行為でもあります。登記は単なるゴールではなく、“想いをかたちにする最後の一歩”です。
だからこそ私は、スムーズな相続のための「前段階」の整理と可視化」に力を入れています。
相談者の想いに耳を傾け、必要な書類を確実に整え、登記につながる道筋を一緒に描いていく。そんな仕事を、私はいつまでも積み重ねていきたいと思っています。
相続で迷ったときは、ぜひ早めにご相談を。 登記の前に一緒に整理をすることで、未来のトラブルは大きく減らせます。 そして何より——その書類の先には、誰かの安心と笑顔が待っていると信じています。
行政書士中川まさあき事務所(福井県越前市味真野地区)