要件事実論における冒頭規定説
売買契約における「要件事実」とは|冒頭規定説の考え方と実務での注意点
売買に関するトラブルや代金請求の場面では、民法の条文の理解と、 「要件事実」の考え方が非常に重要になります。 まずは法律の原点である民法の規定から確認してみましょう。
■ 民法555条:売買の基本的な定義
民法555条 「売買は、当事者の一方がある財産権を相手に移転することを約し、 相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。」
つまり売買とは、
- Aが財産権を移転する約束をする
- Bが代金を支払う約束をする
この二つの約束が成立した時点で、売買契約は成立します。
■ 売買契約の争いで重要となる「要件事実」
例えば、相手が代金を支払わないために訴訟となった場合、 請求の基礎となるのは売買契約に基づく代金請求権です。
このとき裁判で原告が主張すべき「要件事実」は次の2点だけです:
- 自分が財産権を移転する約束をしたこと
- 相手が代金を支払う約束をしたこと
これらの事実を主張し、証拠で裏付けることで、 代金請求権の成立が認められます。
● 逆に、どちらか一つでも立証できなければ請求は認められない
要件事実の欠落は、すなわち請求棄却につながります。 だからこそ、この「2つだけ」が極めて重要なのです。
■ 主張する必要がない事実(むしろ言わない方が良い事実)
次のような詳細は要件事実には含まれません。
- 財産権をどこで受け渡したか
- 代金をいつ支払うと言われたか
- 現金か、分割払いか、支払方法の詳細
これらはケースによっては重要な事実となることもありますが、 代金請求の要件事実には含まれないため、 むやみに主張すると相手に反論材料を与える可能性があります。
■ 冒頭規定説とは?(要件事実論の基本)
民法の条文には「契約が成立するための基本要件」が示されており、 この条文冒頭部分の成立要件を支える事実のみを主張すべきという考え方を 「要件事実論における 冒頭規定説」と呼びます。
売買でいえば、
- 財産権を移転する約束
- その代金を支払う約束
この二つを主張するだけで足りる、ということです。
■ 内容証明を作成する際の注意点
実務上、内容証明を送るケースでは、 言い過ぎ・書き過ぎが後々不利に働くことがしばしばあります。
特に注意すべきは:
- 要件事実に不要なことを書かない
- 主張すべき事実を漏らさない
- 感情的な表現・推測・不要な詳細を避ける
記載内容が後の裁判で利用される可能性があるため、 冷静に、必要最小限かつ正確にまとめることが大切です。
■ まとめ:要件事実を押さえることは「実務の武器」になる
売買契約のトラブルでは、 必要なことだけを正確に主張することが最も重要です。
要件事実論と冒頭規定説を理解しておけば、
- 内容証明の作成
- 交渉の進め方
- 裁判になった場合の戦略
など、実務のあらゆる場面で大きな助けとなります。
※本記事は、2025年時点の民法および一般的な要件事実論に基づいて作成しています。実際の案件では個別の事情による差異がありますので、専門家にご相談ください。
