私たち一般人や民間企業、相互間において様々な法律的なトラブルが発生した場合、弁護士先生にお願いするなどして、相手方に対しやむを得ず裁判上の請求を行うことになることもあります。できるだけそのような面倒なことは避けたいのが山々ですが、時間をかけて話し合いなどをしてもどうしても解決には至らないようなケースもあるかもしれません。この場合、弁護士先生を通じて裁判所へ訴状を提出することになるのですが、この訴状には、少なくとも、①当事者の記載(誰が誰に対して訴えを提起するのか)、②請求の趣旨の記載(原告はどのような結論の判決を求めるのか)、また、請求の原因(そのような結論になる原因は何か)を記載しなければならない旨の規定が民事訴訟法133条1項にあります。
(訴え提起の方式)
第133条 訴えの提起は、訴状を裁判所に提出してしなければならない。
2 訴状には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 当事者及び法定代理人
二 請求の趣旨及び原因
民事訴訟法133条 より抜粋
訴状における請求の趣旨や請求の内容から、裁判所が判決の結論としてその存否を判断するべき「権利」を「訴訟物」といいます。例えば、自分が所有する土地を他人が不法に占拠している場合においては、土地の所有者である自分には、所有権に基づく物権的請求権1があり、「所有権に基づく返還請求権としての土地明渡請求権」を根拠にその他人に対して権利を主張していくことになります。つまり、この「所有権に基づく返還請求権としての土地明渡請求権」が、「訴訟物」ということになります。「訴訟物」は、争い事の争点であることなどから、「審判対象」といわれることもあります。このように、審判対象である「訴訟物」としての権利が認められると、請求が認められるということになり、相手に対し、「立ち退け」とか、「支払え」などといった判決を得て目的を達成できるということになります。
- ●占有権における占有回収の訴え(民法200条)、●占有保持の訴え(民法198条)、●占有保持の訴え(民法199条)に対応して、返還請求権、妨害排除請求権、予防廃除請求権の3種類がある。(通説) ↩︎
「訴訟物」で、広く一般的によくある例は以下の通りです。
- 売買契約に基づく代金支払請求権
- 消費貸借契約に基づく貸金返還請求権
- 賃貸借契約終了に基づく目的物返還請求としての建物明渡請求権
- 所有権に基づく返還請求としての動産引渡請求権
行政書士試験においても、民法における記述問題で、この「訴訟物」関連を題材にすることもありましたので、誰の、どのような権利を基に、どのようなことを求め(勝ち取り)たいか又は求め得るか。といった論点を日頃から訓練しておくことも重要です。