「者」の定義、「処分性」の定義

夏真っただ中、受験生の方は11月の試験に向けて、いよいよ山場を迎え奮闘されているかと思います。
ここでは、所謂・・「者」や「処分性」の定義を区別して再確認してみましょう。

「法律上の利益を有する者」とは

当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうのであり、当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、このような利益もここにいう法律上保護された利益に当たり、当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は、当該処分の取消訴訟における原告適格を有する。
(最大判平17.12.7)小田急高架訴訟判決

「民法第177条にいう第三者」とは

当事者もしくはその包括承継人以外の者で,不動産物権の得喪及び変更の登記欠缺を主張する正当の利益を有する者をいう。」
(大連判明治41.12.15)所有権移転登記抹消請求

「94条における第三者」とは

「虚偽表示の当事者またはその包括承継人以外の者であって、その表示の目的につき法律上利害関係を有するに至った者」をいう(最判昭45.7.24)所有権確認等請求

「処分性」とは

「者」の定義の他に、「処分性」の定義も一緒に覚えておきましょう。ここで、原則と例外の感覚が必要になる点がありますが、それは、講学上、「事実行為」は「処分」に該当しないのですが、「事実行為」であっても、処分性を認めた判例もある点を区別して理解しておく必要があります。以前の記事でも触れましたが、事実行為を、処分の概念と区別してますかね。という問いかけを行政講学という概念でされる場合もあり、逆に、それじゃ、事実行為は行政処分ではないから行政不服審査法や行政事件訴訟法の対象外で却下ですよね。あるいは、処分性が認められる事実行為はどんなものかわかりますか? など、巧みなひっかけにのらないように深く理解しなければなりません。

つまり、原則論では、事実行為と処分は別物 ⇒ しかし、事実行為も訴えの対象となりえる場合もある ⇒ と理解しておきましょう!

・・・「行政庁の処分とは、所論のごとく行政庁 の法令に基づく行為のすべてを意味するものではなく公権力の主体たる国または 公共団体が行う行為のうち、その行為によつて、直接国民の権利義務を形成しまた はその範囲を確定することが法律上認められているものをいうものであることは、 当裁判所の判例とするところである」・・・(一部抜粋)

(最判昭39.10.29)ごみ焼却場設置条例無効確認等請求

・・・・・医療法30条の7の規定に基づく病院開設中止の勧告は,医療法上は当該勧告を受けた者が任意にこれに従うことを期待してされる行政指導として定められているけれども,当該勧告を受けた者に対し,これに従わない場合には,相当程度の確実さ- 3 -をもって,病院を開設しても保険医療機関の指定を受けることができなくなるという結果をもたらすものということができる。そして,いわゆる国民皆保険制度が採用されている我が国においては,健康保険,国民健康保険等を利用しないで病院で受診する者はほとんどなく,保険医療機関の指定を受けずに診療行為を行う病院がほとんど存在しないことは公知の事実であるから,保険医療機関の指定を受けるこ
とができない場合には,実際上病院の開設自体を断念せざるを得ないことになる。このような医療法30条の7の規定に基づく病院開設中止の勧告の保険医療機関の指定に及ぼす効果及び病院経営における保険医療機関の指定の持つ意義を併せ考えると,【要旨】この勧告は,行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に当たると解するのが相当である。・・・(一部抜粋)
(平17.7.15)病院開設中止勧告

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