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風営法は、誰(何)を守り、誰(何)を規制するか?

風営法は、誰(何)を守り、誰(何)を規制するか?

風営法とは?目的・規制内容と「法の下の平等」の視点から考える社会的意義

— 法の趣旨を理解し、すべての事業者が公平に扱われる社会を目指して —

1.風営法の目的と基本理念

風営法(正式名称:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)は、いわゆる「風俗営業」や「性風俗関連特殊営業」などを対象に、社会的秩序と青少年保護を目的として制定された法律です。

第1条(目的)
この法律は、善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため、風俗営業及び性風俗関連特殊営業等について、営業時間、営業区域等を制限し、及び年少者をこれらの営業所に立ち入らせること等を規制するとともに、風俗営業の健全化に資するため、その業務の適正化を促進する等の措置を講ずることを目的とする。

(出典:e-Gov法令検索|風営法

つまり、風営法の目的は「取締り」ではなく、社会の健全な秩序維持と事業者の適正な運営を両立させることにあります。 この法律の下で営業する方々も、法を遵守しながら社会の一員として経済活動を行う「事業者」であることに変わりありません。

2.風俗営業の定義と対象業種

風営法では、対象となる業種を明確に定義しています。代表的なものは以下の通りです。

  • 第2条第1項に規定される「風俗営業」:バー、キャバレー、ナイトクラブ、パチンコ店など。
  • 第2条第6項に規定される「性風俗関連特殊営業」:個室マッサージ業、映像送信型性風俗関連特殊営業など。

これらは営業許可制となっており、公安委員会の許可や営業区域・営業時間・従業者の制限などが細かく定められています。

3.風営法と「法の下の平等」(憲法14条)の関係

日本国憲法第14条には、次のように定められています。

第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

この「法の下の平等」は、職業や業種の違いによって行政上の取扱いに不当な差を設けてはならないという原則を含みます。 風営法のもとで営業する事業者も、法令に基づく手続きを経て許可を得ている以上、他の業種と同じく納税・社会保険・雇用・助成金申請などの権利義務を有しています。

4.コロナ禍で浮き彫りになった“平等”の課題

2020年以降の新型コロナウイルス感染症拡大時、国や自治体による休業要請・支援金制度が導入されましたが、当初は風俗関連業種が支給対象から除外される事例が発生しました。 これは「納税義務を負う一方で、公的支援から排除されるのは不平等ではないか」という議論を呼び、国会やメディアでも問題視されました。

その後、厚生労働省・経済産業省などが制度を見直し、条件を満たす事業者については順次対象範囲を拡大。 風営法に基づく営業であっても、適法に許可を得ている場合は他業種と同様の支援を受けられるよう改善が図られました。

この一連の流れは、憲法14条が掲げる「法の下の平等」が現実社会においても適用されるべきであることを再認識させる出来事でした。

5.健全な運営と社会的理解のために

風営法に基づく事業者の中には、法令遵守と地域調和を重視しながら経営を行っている方々も多く存在します。 重要なのは、偏見やイメージに基づく一律の排除ではなく、法の趣旨に則った適正運営を促進し、「社会の一員としての健全な共存」を図ることです。

行政書士として私が強く感じるのは、制度の理解と法的遵守こそが経営者を守り、社会的信用を築く基盤になるということです。 風営法もそのためのルールブックであり、決して「排除のための法律」ではありません。

6.まとめ:「法の下の平等」を胸に、すべての事業者に光を

風営法の目的は「規制」ではなく、「適正化と健全化」です。 そして憲法第14条が示す「法の下の平等」は、どの業種・職種にも等しく適用される原則です。

かつて支援から外れた人々の声が行政を動かしたように、私たち一人ひとりが法の趣旨を正しく理解し、尊重し合うことが、公平な社会を築く第一歩です。

行政の最新情報や法改正の動きは、e-Gov法令検索や、警察庁|風営法関連資料などの公的機関サイトを参照してください。


執筆者:中川正明(特定行政書士/申請取次行政書士/宅建士)|福井県越前市

※本記事はe-Gov法令検索、警察庁・経済産業省の公表資料、報道発表をもとに執筆しています。最新の法改正・行政方針は公式サイトでご確認ください。

行政書士中川まさあき事務所

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