法令に違反している。として、その是正を行政側から求められる、所謂、行政指導を受けた相手方は、違反の事実はない等として当該行政指導の中止等の求めができる規定が、行政手続法36条の2に定められています。一方、法令に違反する事実がある場合において、何人も、何らかの処分や行政指導をすべきと当該行政庁に対し求めることができる旨の規定が、行政手続法36条の3に定められています。ここで、前者と後者の違いは、前者の場合は、行政指導を受けた相手方に限られるのに対し、後者は、何人も、つまり、誰でも求めることができる点で大きな違いがあります。
行政指導の中止等の求め(行政手続法36条の2)
第36条の2 法令に違反する行為の是正を求める行政指導(その根拠となる規定が法律に置かれているものに限る。)の相手方は、当該行政指導が当該法律に規定する要件に適合しないと思料するときは、当該行政指導をした行政機関に対し、その旨を申し出て、当該行政指導の中止その他必要な措置をとることを求めることができる。ただし、当該行政指導がその相手方について弁明その他意見陳述のための手続を経てされたものであるときは、この限りでない。
2 前項の申出は、次に掲げる事項を記載した申出書を提出してしなければならない。
一 申出をする者の氏名又は名称及び住所又は居所
二 当該行政指導の内容
三 当該行政指導がその根拠とする法律の条項
四 前号の条項に規定する要件
五 当該行政指導が前号の要件に適合しないと思料する理由
六 その他参考となる事項
3 当該行政機関は、第1項の規定による申出があったときは、必要な調査を行い、当該行政指導が当該法律に規定する要件に適合しないと認めるときは、当該行政指導の中止その他必要な措置をとらなければならない。
行政手続法36条の2
この条文は、例えば、悪意なく結果的に外形的に違反してしまっているような場合や、実際には違反の事実はないのに違反と判定されているような場合において、行政指導をされた相手方(当人)が、申出書を提出して行政指導の中止を求め、後続的に予定されている処分をも回避したいという意図を以って申出するようなケースが当てはまると言えます。ここでは、行政指導をされた者(行政指導の相手方)しか申出する権利がないという点で次の36条の3と根本的な違いがあります。
処分等の求め(行政手続法36条の3)
第36条の3 何人も、法令に違反する事実がある場合において、その是正のためにされるべき処分又は行政指導(その根拠となる規定が法律に置かれているものに限る。)がされていないと思料するときは、当該処分をする権限を有する行政庁又は当該行政指導をする権限を有する行政機関に対し、その旨を申し出て、当該処分又は行政指導をすることを求めることができる。
2 前項の申出は、次に掲げる事項を記載した申出書を提出してしなければならない。
一 申出をする者の氏名又は名称及び住所又は居所
二 法令に違反する事実の内容
三 当該処分又は行政指導の内容
四 当該処分又は行政指導の根拠となる法令の条項
五 当該処分又は行政指導がされるべきであると思料する理由
六 その他参考となる事項
3 当該行政庁又は行政機関は、第1項の規定による申出があったときは、必要な調査を行い、その結果に基づき必要があると認めるときは、当該処分又は行政指導をしなければならない。
行政手続法36条の3
この条文は、例えば、近所の住人が、隣の建物が、危険な状況におかれている場合において、行政がなんらの対応をしていないときに、行政機関に対し、なんらかの行政指導や処分をするよう求めるというケースが当てはまるといえます。ここでは、誰でも(何人も)申出ることができるという点で36条の2とは大きな違いがあります。
(適用除外)第3条
これら行政手続法36条の2や3も、下記の行政手続法3条の適用除外の規定に留意して解釈する必要があります。つまり、これらの行政指導が、地方公共団体の機関によりなされた場合は、全て対象外ということになる。という点です。対象は、国等からの行政指導が前提ということになります。
行政手続法3条
3 第1項各号及び前項各号に掲げるもののほか、地方公共団体の機関がする処分(その根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)及び行政指導、地方公共団体の機関に対する届出(前条第7号の通知の根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)並びに地方公共団体の機関が命令等を定める行為については、次章から第6章までの規定は、適用しない。
行政手続法3条 一部抜粋