契約書の基本とは

 お互いの口約束だけでは、不確かな部分を表現できなかったり、契約した後に想定される場面に遭遇した場合の対応が分からなかったりすることなどを避けるため、あるいは、約束した事柄の内容について互いに温度差や解釈の違いがあるということもあり、やはり、お互いの約束事を書面化して相互に確認して、のちのちのためにも保管しておきましょうというのが、契約を書面化するという意義だといえます。ここでは、この約束事を契約書として書面化する場合の基本事項について確認してみたいと思います。

契約書における共通の条項 ①当事者

当たり前のことですが、誰と誰の約束なの?というそもそもの話しになりますが、これを明らかにするところから始まります。一般的には、氏名○○○○(以下、「甲」という。」とか、会社名○○、代表者○○○○○○(以下、「乙」という。)などの表現方法を使うことが一般的です。ここでの注意点は、そもそも、当事者となりえるかどうかという点です。法律用語では、「行為能力」とか、「権利能力」という表現がされますが、このいずれかを持ち合わせていない場合は、当事者としての効力が生ぜず契約そのものが無効となる可能性が残されるということになります。次に、当事者が特定されると、契約書の最後に、当事者の氏名や印鑑が押されることになりますが、この場合においても、①「捺印」(署名と押印が必要)で対応するケース、②「記名・押印」(記名とは、署名と違い文書の中に記載されていれば足りる)で対応するケース、③「電子サイン、電子署名」等で対応するケースが考えられます。また、押印も実印の押印が必要な場合と、認印でいい場合、銀行印でいい場合などがありますが、これは、ケースバイケースということになります。いずれにしても、互いに、意思を確認した証拠として記されることになります。

契約書における共通の条項 ②目的

これは、この契約は「何のために締結するのか」を明らかにする意味で、その目的を記載するのが一般的です。そこがもやっとしていると、契約書全体がしまりのないものになりかねないという側面もありますので、必然的に記載される項目のひとつになります。

契約書における共通の条項 ③契約の内容

ここ項目が一番肝心な条項で、約束した具体的内容、所謂、権利と義務に関する詳細な内容が記載されるということになります。お互いの権利、お互いの義務に関する契約の根本についての内容が記載されますから、ここを誤ると契約の意味がないという事になってしまいます。

契約書における共通の条項 ④付帯的な義務の内容

ここでは、契約の具体的内容に関する義務以外の、社会通念上互いが当然に順守すべき条項が記載されます。

  • 個人情報保護に関する事項
  • 機密保持(秘密保持)に関する事項
  • 反社会的勢力の排除に関する事項
  • 報告・通知の義務に関する事項
  • 債権譲渡、債務引受けの禁止に関する事項

契約書における共通の条項 ⑤期間・中途解約・期限の利益の喪失

 これは、契約内容に含まれる事項ですが、特記すべき事項として別途、条項として明記されるのが一般的です。その方が分かりやすいという理由があるようにも思えます。ここでは、この約束事はいつからいつまでにしましょうか。という点や、期間中に、何らかの事情により契約を解約しましょうか。となったらどうしましょう。という点、更には、期間中に、私やあなたが、破産したり、死亡したらどういうようになるかなどといった点を明記することになります。

契約書における共通の条項 ⑥契約終了後の対応

ここでは、契約期間が終わったらどうしましょうか。そのまま続けて継続しましょうか。あるいは、そこで完全に終わりという事にしましょうか。などといったことを記載することになります。一般的には、原則自動更新とするか、1回だけ更新するか、期間を定めて延長するか、期間終了したら終わりにするか、などを明確にすることに意義があります。

契約書における共通の条項 ⑦債務不履行の場合の対応

ここでは、約束事の内容について当事者の一方又は双方が、債務を履行しない時や不完全履行の場合、履行が遅れたりなど契約内容や約束事を破ったりした場合にどういうように対応するかについて明記しておくということになります。これには、不可抗力である、所謂、天災などにより債務不履行に陥った場合も記載されるのが一般的です。

  • 損害賠償請求に関する事項(損害賠償を相手に請求する、請求できるという項目を明記)
  • 契約解除に関する事項(解約できる権利を留保する意味合いを含む)
  • 不可抗力に関する事項(やむを得ない天災などにより約束事が守れなくなったときはどうするか、どのようにお互い解釈すればいいかを明記)

契約書における共通の条項 ⑧紛争解決手段、相互協力の条項

ここでは、契約内容のまとめとして、民法上の基本原則でもある「信義誠実」にお互いが対応するという事を記載するほか、それでも万が一、契約に関して紛争が生じた場合にはどうするかを明記することとし、裁判管轄に関する事項が明記され、どの裁判所へ訴えを提起するかが記載されるということになります。

以上、契約書の基本的な内容について説明してきましたが、もう一つの視点で考えた場合、どのような位置づけとして残すのかということもあります。これは、作成した契約書を当事者だけに留まらず、例えば、公証人役場で公正証書扱いの契約書として作成・保管するのか、あるいは、公的な機関や認証機関などを通じて保管する、電子署名された契約を安全なサーバー内に保管するなどといった、保管方法や手段の違いにより契約の内容がさらに保証されたり、安全性が高まるといった別の考え方も生じえます。

行政書士は、これら契約書の作成を業としていますので、分からないことや面倒と感じるような場合には、ご遠慮なくご相談いただければ幸いです。

行政書士中川まさあき事務所