入管法第五条の二から第七条第一項までの条文と、第二六条及び第二六条の二の関係について小さいことですが、解釈を誤るとだめなところ、そして、条文を雑に解釈することの危険性をとある先生が指摘されていましたので今日はこれをご紹介します。
法第五条の二において、法二六条第一項との関連でいうと、上陸拒否事由に該当していたとしても、第二六条第一項の規定により再入国の許可を与えた場合で相当と認めるときは上陸を認めることがある。という解釈になるのですが、この法第五条の条文の中の「第二六条第一項の規定により再入国の許可を与えた場合」をどう捉えるかという点ですが、条文を上辺だけ読み込んだ場合、解釈を誤る可能性があるという点を指摘されていたのです。
上記法第五条の論点を横に置いておいた上で次の論点をみていきます。法第六条と法第七条においても同様に、「法第二六条第一項の規定により再入国の許可を与えた場合(許可を受けている者)」と同じ文言が登場するのですが、法第六条においては、第二十六条第一項の規定により再入国の許可を受けている者(第二十六条の二第一項又は第二十六条の三第一項の規定により再入国の許可を受けたものとみなされる者を含む。以下同じ。)のように()書きがありなおかつ、最後に「以下同じ。」という文言が入っていることがわかります。つまり、法第六条における第二十六条第一項の規定により再入国の許可を受けている者の中には、当然に、法第二六条の二によるみなし再入国の許可を受けた者も含まれるということになるのです。法第六条は、含まれることが()書きで書かれていますから当然そのように解釈できますが、次の法第七条では、みなし再入国二六条の二の記載は省略されています。
つまり、法第七条の入国審査を受ける場合、第二十六条第一項の規定により再入国の許可を受けている者は、第一号と第四号の条件のみ適合しているかを審査されるのですよ。ということになっているのですが、この第七条には、二六条の二のみなし再入国の許可を受けた者も含まれるのか、それとも含まれないのかということになると、法第六条において、「以下同じ。」の記載を受けているから、第七条の第二十六条第一項の規定により再入国の許可を受けている者の中には、みなし再入国の許可を受けた者も含まれるという解釈をしなければいけないことになります。
以上の法第六条と法第七条については理解できたとして、法第五条に戻って考えると、同様に含まれるのか含まれないのかぼんやりしてしまうことはないかということです。
七条は六条の文言を受けていることはわかりますが、当たり前ですが五条は六条の前の条文であるので「以下同じ」を受ける要素がないということに加え、法第二六条第一項の許可を受けた者と法第二六条の二のみなし再入国の許可を受けた者を同じようにみていいかどうかについて、同じように見えてしまうとすれば勉強不足ということになり、曖昧だと解釈も曖昧になってしまい、ひよっとして含まれる?と感じてしまう危険性があるとうことを肝に銘じ、条文を読むうえで十分深く理解する必要があるということになります。
二六条の再入国の許可を受けた者と、二六条の二のみなし再入国のように出国の際の告知をもってみなし再入国の許可とされる者は同じではないという考えが浮かぶ必要があるということになります。
以上のように、法体系全体を理解するためには、正確な条文読み込みと深い理解が必要であるということを再確認したのです。
(上陸の拒否の特例)
入管法5条の二 抜粋
第五条の二 法務大臣は、外国人について、前条第一項第四号、第五号、第七号、第九号又は第九号の二に該当する特定の事由がある場合であつても、当該外国人に第二十六条第一項の規定により入国の許可を与えた場合その他の法務省令で定める場合において、相当と認めるときは、法務省令で定めるところにより、当該事由のみによつては上陸を拒否しないこととすることができる。
(上陸の申請)
入管法第六条 抜粋
第六条
1 本邦に上陸しようとする外国人(乗員を除く。以下この節において同じ。は、有効な旅券で日本国領事官等の査証を受けたものを所持しなければならない。ただし、国際約束若しくは日本国政府が外国政府に対して行つた通告により日本国領事官等の査証を必要としないこととされている外国人の旅券、第二十六条第一項の規定により再入国の許可を受けている者(第二十六条の二第一項又は第二十六条の三第一項の規定により再入国の許可を受けたものとみなされる者を含む。以下同じ。)の旅券又は第六十一条の二
の十五第一項の規定により難民旅行証明書の交付を受けている者の当該証明書には、日本国領事官等の査証を要しない。
2 前項本文の外国人は、その者が上陸しようとする出入国港において、法務省令で定める手続により、入国審査官に対し上陸の申請をして、上陸のための審査を受けなければならない。
3 前項の申請をしようとする外国人は、入国審査官に対し、申請者の個人の識別のために用いられる法務省令で定める電子計算機の用に供するため、法務省令で定めるところにより、電磁的方式(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式をいう。以下同じ。)によつて個人識別情報(指紋、写真その他の個人を識別することができる情報として法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)を提供しなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する者については、この限りで
ない。
一 日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(平成三年法律第七十一号)に定める特別永住者(以下「特別永住者」という。)
二 十六歳に満たない者
三 本邦において別表第一の一の表の外交の項又は公用の項の下欄に掲げる活動を行おうとする者
四 国の行政機関の長が招へいする者
五 前二号に掲げる者に準ずる者として法務省令で定めるもの
(入国審査官の審査)
入管法第七条第一項 抜粋
第七条
1 入国審査官は、前条第二項の申請があつたときは、当該外国人が次の各号(第二十六条第一項の規定により再入国の許可を受けている者又は第六十一条の二の十五第一項の規定により交付を受けた難民旅行証明書を所持している者については、第一号及び第四号)に掲げる上陸のための条件に適合しているかどう
かを審査しなければならない。
一 その所持する旅券及び、査証を必要とする場合には、これに与えられた査証が有効であること。
二 申請に係る本邦において行おうとする活動が虚偽のものでなく、別表第一の下欄に掲げる活動
(二の表の高度専門職の項の下欄第二号に掲げる活動を除き、五の表の下欄に掲げる活動については、法務大臣があらかじめ告示をもつて定める活動に限る。)又は別表第二の下欄に掲げる身
分若しくは地位(永住者の項の下欄に掲げる地位を除き、定住者の項の下欄に掲げる地位については、法務大臣があらかじめ告示をもつて定めるものに限る。)を有する者としての活動のいず
れかに該当し、かつ、別表第一の二の表及び四の表の下欄に掲げる活動を行おうとする者については我が国の産業及び国民生活に与える影響その他の事情を勘案して法務省令で定める基準に適
合すること(別表第一の二の表の特定技能の項の下欄第一号に掲げる活動を行おうとする外国人については、一号特定技能外国人支援計画が第二条の五第六項及び第七項の規定に適合するもの
であることを含む。)。
三 申請に係る在留期間が第二条の二第三項の規定に基づく法務省令の規定に適合するものであること。
四 当該外国人が第五条第一項各号のいずれにも該当しないこと(第五条の二の規定の適用を受ける外国人にあつては、当該外国人が同条に規定する特定の事由によつて同項第四号、第五号、第七号、第九号又は第九号の二に該当する場合であつて、当該事由以外の事由によつては同項各号のいずれにも該当しないこと。以下同じ。)。
(再入国の許可)
入管法第二六条第一項 抜粋
第二十六条
1 出入国在留管理庁長官は、本邦に在留する外国人(仮上陸の許可を受けている者及び第十四条から第十八条までに規定する上陸の許可を受けている者を除く。)がその在留期間(在留期間の定めのない者にあつては、本邦に在留し得る期間)の満了の日以前に本邦に再び入国する意図をもつて出国しようとすると
きは、法務省令で定める手続により、その者の申請に基づき、再入国の許可を与えることができる。この場合において、出入国在留管理庁長官は、その者の申請に基づき、相当と認めるときは、当該許可を数次再入国の許可とすることができる。
2 出入国在留管理庁長官は、前項の許可をする場合には、入国審査官に、当該許可に係る外国人が旅券を所持しているときは旅券に再入国の許可の証印をさせ、旅券を所持していない場合で国籍を有しないことその他の事由で旅券を取得することができないときは、法務省令で定めるところにより、再入国許可書を交付させるものとする。この場合において、その許可は、当該証印又は再入国許可書に記載された日からその効力を生ずる。
3 出入国在留管理庁長官は、再入国の許可を与える場合には、当該許可が効力を生ずるものとされた日から五年を超えない範囲内においてその有効期間を定めるものとする。
4 出入国在留管理庁長官は、再入国の許可を受けている外国人から、法務大臣に対する第二十条第二項又は第二十一条第二項の規定による申請があつた場合において、相当と認めるときは、当該外国人が第二十条第六項の規定により在留できる期間の終了の時まで、当該許可の有効期間を延長することができる。
5 出入国在留管理庁長官は、再入国の許可を受けて出国した者について、当該許可の有効期間内に再入国することができない相当の理由があると認めるときは、その者の申請に基づき、一年を超えず、かつ、当該許可が効力を生じた日から六年を超えない範囲内で、当該許可の有効期間の延長の許可をすることができる。
6 前項の許可は、旅券又は再入国許可書にその旨を記載して行うものとし、その事務は、日本国領事官等に委任するものとする。
7 出入国在留管理庁長官は、再入国の許可を受けている外国人に対し、引き続き当該許可を与えておくことが適当でないと認める場合には、その者が本邦にある間において、当該許可を取り消すことができる。
8 第二項の規定により交付される再入国許可書は、当該再入国許可書に係る再入国の許可に基づき本邦に入国する場合に限り、旅券とみなす。
(みなし再入国許可)
入管法第二六条の二 抜粋
第二十六条の二
1 本邦に在留資格をもつて在留する外国人(第十九条の三第一号及び第二号に掲げる者を除く。)で有効な旅券(第六十一条の二の十五第一項に規定する難民旅行証明書を除く。)を所持するもの(中長期在留者にあつては、在留カードを所持するものに限る。)が、法務省令で定めるところにより、入国審査官に
対し、再び入国する意図を表明して出国するときは、前条第一項の規定にかかわらず、同項の再入国の許可を受けたものとみなす。ただし、出入国の公正な管理のため再入国の許可を要する者として法務省令で定めるものに該当する者については、この限りでない。
2 前項の規定により外国人が受けたものとみなされる再入国の許可の有効期間は、前条第三項の規定にかかわらず、出国の日から一年(在留期間の満了の日が出国の日から一年を経過する日前に到来する場合には、在留期間の満了までの期間)とする。
3 第一項の規定により外国人が受けたものとみなされる再入国の許可については、前条第五項の規定は、適用しない。
宅建の試験の問題においても、問 ○○は○○である。という設問は〇か×かという問われ方をした場合において、×と答えて誤りとされたことが過去にありました。何が誤りかというと、 原則として○○は○○である。が正解だから問は誤りという結論を出さなければならい。つまり、「原則として」 が抜けているから誤りだということになったケースがありました。条文そのまま読んで、一般論でいえば〇でもいいような気がしてくるのですがそうはいかなかったようです。ここでは、ちょっとした言い回しを見落としていたというだけがダメな点だったかというとそうではなく、もっと深いところではその法令全体の体系を十分に理解していなかった点にあるといえます。
条文はそこだけ読んで理解したような錯覚でいることもそれは違うということであり、全体の法体系と条文間の構成など深く理解しないと、結果は同じでも、仕事の質に格段の差が生じるという先生の指摘は的をえているという気がしました。