相続関係 「子」の視点でよくある思い違い 

相続関係を「子」の視点でみていく場合、「子」のパターンについては、下記の6つに区分して想定すると分かりやすくなると思います。
その上で、自分でも理解しにくかった点を更に下記の4項目にまとめてみました。
参考になるかどうかわかりませんが、よろしければ読んでいってください。
あくまでも私見ですので、複雑なケースになった場合は、弁護士先生など士業専門家へ予めよくご相談されることをお勧めします。

①被相続人の子(実子)
②被相続人と離婚した元妻との間に生まれた子(実子)
③被相続人と、被相続人がかつて婚姻関係にない者との間に生まれた子(非摘出子/実子)
④被相続人の子が養子である場合において、その養子の妻の連れ子
⑤被相続人の子が養子である場合において、その養子の妻との間において養子縁組後に生まれた子   
⑥被相続人の子が養子である場合において、その養子の妻との間において養子縁組前に生まれた子 

項目1
※被相続人からみてどういう関係かという視点

例えば、④の被相続人の子が養子である場合において、その養子の妻の連れ子について、見ていきますと、被相続人からみて、この方は血縁関係にないため相続人とはならず、代襲相続は発生しません。しかし、この養子本人がその妻の連れ子との間で養子縁組した後、被相続人になった場合は、養子本人の実子と養子となった連れ子は、同等の立場になるということなどがコンフューズし、養子本人の妻の連れ子も相続対象ではないかと勘違いするのです。このような場合は、相続人からではなく、被相続人(亡くなった方)から関係性を確認していくことで、余計な迷路に迷うことはなくなると思います。但し、実子と養子縁組した子の相続関係は違いなく、同等ということは区別しなければなりません。また、養子縁組しても、相続税上無制限にカウントされる訳ではないので、この辺りは税理士先生によく相談する必要があります。一般的に、亡くなった人に実子がいる場合は、一人まで。いなかった場合は、二人までとされています。

項目2
※相続分が同等か、それとも、半分かという視点

相続分が同等なのか、半分なのかという視点では、以下の2つに分けて考えると分かりやすいと思います。

【1つ目】
旧民法900条4項の下記削除部分が残存していたころは、③の非嫡出子の相続分は、➀の実子の相続分の2分の1として、明治時代から続く婚外子への格差規定が100年以上続いておりました。

旧民法900条4項

「子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、嫡出でない子の相続分は、摘出である子の相続分の2分の1とし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。」

しかし、平成25年9月4日最高裁が「民法900条第4号ただし書の規定のうち摘出でない子の相続分を摘出子の相続分の2分の1とする部分は憲法違反である。」との判断を示したことから、平成25年12月5日民法の一部を改正する法律が成立し、実子と非摘出子の相続分は同等となりました。ただ、法務省下記ホームページに掲載された事項は該当する方は留意が必要です。

平成13年7月1日から平成25年9月4日(本決定の日)までの間に開始した相続について,本決定後に遺産の分割をする場合は,最高裁判所の違憲判断に従い,嫡出子と嫡出でない子の相続分は同等のものとして扱われることになります。
他方,平成13年7月1日から平成25年9月4日(本決定の日)までの間に開始した相続であっても,遺産の分割の協議や裁判が終了しているなど,最高裁判所の判示する「確定的なものとなった法律関係」に当たる場合には,その効力は覆りません

ということで、同等か、半分かという視点では、旧法の考え方が記憶に残っている方は、勘違いするポイントかもしれません。

【2つ目】
1つ目が、同等である一方で、民法900条4項の規定(ただし書き以降、「ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする。」)により、異母兄弟姉妹や異父兄弟姉妹の相続分は、半分になるということが・・・?疑問?となる方も多いようです。
これは、1つ目において、旧法ただし書部分の該当部分が削除改正された一方で、二つ目においては、但し書はそのまま残っていることに起因します。
つまり、1つ目の非嫡出子の問題と2つ目の異母兄弟姉妹・異父兄弟姉妹の問題がコンフューズしてしまうからです。ここでは、「子」と「兄弟姉妹」は、それぞれ別の問題と考える必要があります。

ということで、同等か、半分かという視点では、1つ目と2つ目の概念が、混同されてしまっている方は、勘違いするポイントかもしれません。

項目3
※代襲相続、再代襲はどこまでかという視点

法定相続人が、死亡、欠格や廃除に該当することとなった場合に、その子供が代わりに遺産を相続する制度で、法定相続人の子供も既に亡くなっている場合は、孫が相続し、さらに、孫も既に亡くなっている場合は、曾孫が再代襲相続することとなります。ここで、注意が必要なのは、法定相続の優先順位 第三順位の相続人である兄弟姉妹が亡くなっている場合は、兄弟姉妹の子が代襲相続することになりますが、子も亡くなっている場合は、孫が再代襲することはないということです。(ただし、相続発生が昭和23年1月1日~昭和55年12月31日である場合には、旧民法が適用となり、再代襲相続が認められます。 民法889条)

補足になりますが、「直系尊属」が相続人になる場合には、「子」の場合とは違って、代襲相続という概念は働かず、両親(直系1親等)がいない場合には、祖父母(直系2親等)、更に、曽祖父母(直系3親等)と遡ることになります。

項目4
※いつまで? という視点

いつまでに・・という視点で主なものをまとめると以下の通りとなります。
●相続放棄、限定承認

相続の開始を知った日から原則3ケ月以内
●認知の訴え      父又は母の死亡の日から原則3年を経過する迄に
●相続税の申告と納税  相続の開始を知った日の翌日から原則10ケ月以内           
           (税理士先生への依頼相談が必要)
●相続回復請求     相続権を侵害された事実を知った時から5年以内

●令和5年施行の改正民法では、遺産分割協議において特別受益と寄与分の主張をする場合の期限が相続開始の時から10年と定められることになり、実質的に10年以内というのが一般的になるということ。
●⑤及び⑥の場合、被相続人の子が養子である場合において、その養子の妻との間において生まれた子が、養子縁組の前と後で、代襲相続人となり得るかどうかの判断が分かれるということになります。つまり、養子縁組前に生まれた子は、養親とは血縁関係にないため代襲相続は出来ず、養子縁組後に生まれた子は、養親との間に血縁関係が生じるため、代襲相続できることになります。

●民法886条 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
これについては、繰り返し何回も勉強する内容のため、問題なく理解できていると思いますが、タイミングという意味では、場合によっては中身の深いものになります。しかし、実務ではあまりお目にかからないようです。

ということで、いつまで?・・・という視点でいうと、この他にもいろいろありますが、最低限おさえる必要があるこれらの期限などは重要なことですので、それぞれの専門の士業先生に相談しましょう!

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