報道によれば、「政策金利に位置付ける無担保コール翌日物金利の誘導目標を0~0.1%程度から0.25%程度にする。3月のマイナス金利政策の解除に続く利上げで、リーマンショック後2008年12月以来、16年ぶりの水準」ということです。
ここで、
無担保コール翌日物金利の誘導目標とは何ぞや ・・・と考える前に、
今までの、金融政策を振り返ってみましょう!
1985年 プラザ合意 米国の円高ドル安容認を受け、政府は、これによりすすんだ急速な円高により国内景気が低迷 したため、1987年2月のルーブル合意を経て1987年迄に複数回に渡り金融緩和政策を実施しましたが、これが過剰流動性を招きバブル景気が起こることになりました。
1989年 バブル経済を受け、金融引締め政策を段階的に実施しました。
1990年~ 株価下落による資産縮小や融資制限等を背景に銀行の不良債権が増加。 バブル崩壊
1979年譲渡性預金の認可が金融自由化の開始とされますが、金融ビッグバンにより、さらに金融市場の活性化や国際化がすすみました。日本における金融ビックバンとは、1997年の「金融システム改革ノプラン」に盛り込まれた政策をさし、1998年「金融システム改革法」によって関係法律を整備し改革がすすめられました。
以下、日本銀行のホームページから引用
1995年に金利自由化完了
1995年から、短期市場金利を誘導する公開市場操作を通じて金融市場調整を行うようになりました。
1998年以降は特に、「平均的にみて○○%前後で推移するよう促す」などと、誘導目標を具体的に定めるようになりました。
1999年~2000年にかけては、「ゼロ金利政策」が実施され、金融市場調整方針は「無担保コールレートをできるだけ低めに推移するよう促す」などとされていました。
2001年には、「量的緩和政策」が開始され、金融市場調整の主たる操作目標は、無担保コールレートから日本銀行当座預金残高に変更されました。
2006年には、量的緩和政策が解除されると、金融市場調整の操作目標は、再び無担保コールレートとなりました。
2010年に開始された「無担保コールレートを0~0.1%程度で推移するように促す」と定められました。2013年には、「量的・質的金融緩和」が開始され、金融市場調整の主たる操作目標は、無担保コールレートからマネタリーベースに変更された他、長期国債の買入れなど、資産買入れの方針も定められました。
2016年1月に導入された「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」のもとでは、2013年の方針などを維持しつつ、補完当座預金制度が改正され、政策金利として、日本銀行当座預金のうち「政策金利残高」に0.1%のマイナス金利を適用することが決定されました。
2016年9月に導入された「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとでは、短期の政策金利については、「日本銀行当座預金のうち政策金利残高に-0.1%のマイナス金利を適用する」、長期金利の操作目標については、「10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。」などが定められました。
2024年3月からは、金融政策の枠組みを見直し、政策金利を無担保コールレートとした上で、金融市場調整方針においてその誘導目標を定めています。
このように、様々な紆余曲折を経て、現在に至っていることが確認できます。
参考までに、以下の用語を一緒に確認してみましょう。
公開市場操作
公開市場操作とは、オペレーション(オペ)とも呼ばれ、日本銀行が金融機関と行う取引で、日銀が金融機関に資金を貸し付けたり、国債を買い入れたりすることで市場に資金を供給する、買いオペと、資金を吸収する売りオペなどからなります。
準備預金制度
準備預金制度とは、対象となる金融機関に対し、当該金融機関が有する預金等の一定比率(準備率)以上の金額を日本銀行へ預け入れることを義務で受けることです。1957年(昭和32年)に施行された「準備預金制度に関する法律」により金融政策の手段として導入されたようです。
コール市場
コール市場とは、金融機関が日々の短期的な資金の過不足を調整するための取引を行う場のことです。
無担保コールレート
無担保コールレートとは、コール市場における無担保での資金貸借のうち、約定日に資金の受払を行い、翌営業日を返済期日とするものにかかる金利のことです。
以上のことから、「政策金利に位置付ける無担保コール翌日物金利の誘導目標を0~0.1%程度から0.25%程度にする。」ことは、結局、金融機関の基準金利も引上げとなり、金利が上がるということが理解できると思います。
金融政策は、私達の生活に直接影響を与えるもので、常に関心がある事項のひとつです。
日本においては、かつての金融機関の護送船団方式といわれた時代が1990年代までに終焉を迎え、日本においても金融の国際化・自由化がすすめられてきましたが、今となっては随分昔のように感じます。
今月、3日には、日本銀行発行の新紙幣が発行されたばかりですが、為替相場も然り、目まぐるしく変わる経済状況には、やや疲労感さえ感じてしまう位です。
また、欧米の金利引下げのタイミングに国際的な関心が集中していたところ、日本が逆行する形になっているのは素人ながら、不思議な感覚を覚えるところでもあります。いずれにしても、物価が適度に上昇しつつ、全体の実質的な所得もそれ以上にあがっていけばいいのですが、利上げがプラスに働く業種もあれば、マイナスに働く業種もあり、手放しで一喜一憂しているわけにはいかず、世の中の流れに必死についていくことになりそうです。