「処分」、「処分性」、「事実行為」、「公権力の行使」、「職務を行うについて」、「法律により直接命ぜられ、又は法律に基き行政庁により命ぜられた行為」などの使い分け
試験勉強をしていると、行政不服審査法、行政事件訴訟法、行政手続法、国家賠償法、行政代執行法、行政講学上の用語などがそれぞれ混同してしまい、論点ずれが生じてしまうことがよくあると思います。そこで、私がよくやらかした過ちをいくつか挙げてみたいと思います。
「行政処分」とは、行政が法律に基づいて国民の権利や義務に直接影響を及ぼす行為をいいます。一方、行政講学上の「事実行為」とは、行政機関が行う国民の権利や義務に力接的な法的効果を持たない行為をいい、具体的には、行政指導や即時強制が該当するといわれています。
また、「処分」とは、「公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているもの」と定義されています。
ここで間違いやすいのが、事実行為であっても処分性を認め、行政事件訴訟の原告適格を有するとする判例もあるという点です。行政手続法において処分と事実行為は別物との認識を持ちつつ、前記のことも想定しなければならない点がコンフューズします。また、行政不服審査法上の認容裁決において、事実行為に対する裁決や不作為についての裁決については、違法不当の宣言がなされますが、処分に対する裁決にはこの宣言がない点も判りにくいです。つまり、問題を作る側にとっても、ひっかけを仕掛けてきやすい点なのです。処分と事実行為の区別、行政講学上の論点を強く意識するあまり、判例の考え方を見失うということになります。また、処分と処分性の論点も同様と考えられます。
さらに、
国家賠償法 第一条において、「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」
行政代執行法 第一条において、「法律(法律の委任に基く命令、規則及び条例を含む。以下同じ。)により直接に命ぜられ、又は法律に基き行政庁により命ぜられた行為(他人が代ってなすことのできる行為に限る。)について義務者がこれを履行しない場合、他の手段によってその履行を確保することが困難であり、且つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、当該行政庁は、自ら義務者のなすべき行為をなし、又は第三者をしてこれをなさしめ、その費用を義務者から徴収することができる。」
とそれぞれ規定されていますが、
国家賠償法上の「・・・・その職務を行うについて」のニュアンスや、行政代執行法上の「法律(法律の委任に基く命令、規則及び条例を含む。以下同じ。)により直接に命ぜられ、又は法律に基き行政庁により命ぜられた行為(他人が代ってなすことのできる行為に限る。)」の
「行為」のニュアンスがコンフューズしてしまうのです。
これらを明確に区別して理解し、論点は何かという点を強く意識して、作題者のひっかけポイントに引っかからないようにするといいと思います。