電子サイン・電子署名の違いとAdobe/ALSOKの比較|電子サイン手順を行政書士がわかりやすく解説
契約のデジタル化が急速に進む中、「電子サイン」と「電子署名」の違い、そして利用するサービスの選び方は、企業・士業・個人事業主にとって重要なテーマです。
本記事では、電子サイン/電子署名の違い、Adobe と ALSOK(セキュリティ型電子署名サービス)の違い、そして Adobe Acrobat を使った電子サインの具体的手順をまとめて解説します。
法的根拠(電子署名法)
電子署名法では、「本人が行ったこと」「改ざんされていないこと」を確認できる電子的手段を“電子署名”と定義しています。
紙の署名や押印と同等の法的効力を持ち得るのが電子署名です。
1. 電子サインと電子署名の違い
● 電子サイン(一般的な署名)
- 画像貼付や手書き入力など「電子的に署名」を表現する仕組み
- 操作が簡単で導入しやすい
- 法律上は“本人確認の推定”が弱く、証拠力は限定的
● 電子署名(電子署名法に基づく署名)
- 電子証明書による本人確認・改ざん防止がセット
- 電子署名法で押印と同等の法的効力を持つとされる
- 認証局(CA)、電子証明書の管理が必要で手続きはやや厳格
つまり、電子署名は電子サインを包含する、より厳格な署名方式です。
2. Adobe と ALSOK の違い(電子サイン/電子署名サービス比較)
電子サイン/電子署名サービスには、大きく分けて「利便性重視型(Adobe)」と「認証・セキュリティ重視型(ALSOKなど)」があります。
(1)Adobe(Acrobat / Acrobat Sign)の特徴
- PDF編集 → 電子サイン → 回収 → 保存まで一括管理
- 操作が簡単で、事務作業のデジタル化がスムーズ
- 電子サイン(簡易)と電子署名(証明書)の両方に対応
- 多くの企業が利用しており、取引先との相性が良い
(2)ALSOK(セキュリティ・電子認証サービス)の特徴
- 警備会社らしく「本人性」「改ざん防止」「証跡管理」を重視
- 電子証明書を用いた 高度電子署名 に強み
- 士業向けのサービスがある(行政書士・司法書士・税理士等)
- 重要文書・リスクの高い契約で信頼性が高い
(3)違いをわかりやすくまとめると
| 項目 | Adobe | ALSOKなど |
|---|---|---|
| 特徴 | 利便性・文書編集に強い | セキュリティ・認証力が高い |
| 署名方式 | 電子サイン・電子署名両対応 | 電子署名(証明書利用)が中心 |
| 証明力 | 中~高(運用方法に依存) | 高(改ざん検知・証跡管理) |
| 向いている用途 | 日常業務の契約・事務処理 | 重要契約・許認可・士業業務 |
| 導入しやすさ | 非常に導入しやすい | やや高度だが確実性が高い |
(4)どちらを選ぶべきか?
目的によって使い分けることが理想です。
Adobe が向くケース
・契約書の多くが日常的・実務的
・相手がITに強くない
・スピード重視
ALSOKなどが向くケース
・遺言・相続・許認可など「証明力が極めて重要」
・機密性の高い契約書
・大手企業/公的機関との契約
3. Adobe Acrobat を使用した電子サイン手順
ここからは、Adobe Acrobat(有料版)を使用した電子サインの流れを解説します。
① Adobeアカウント作成
- 公式サイト → 「ログイン」
- Googleアカウントでのログインも可能
- メールアドレス登録でもOK
② プラン購入(Acrobat Pro / Acrobat Sign)
※価格は変動するため、最新は Adobe公式で確認してください。
→ Adobe公式サイト
③ Acrobat Pro をインストール
- Adobe IDでログインし、ダウンロード → インストール
④ PDFを開き「電子サイン」を選択
- クイックアクション → 「PDFを編集」
- 対象PDFを選択して開く
- 画面上メニュー「電子サイン」をクリック
⑤ 電子サイン依頼の開始
- 「フォームの入力と署名」→「次へ」
- 「招待して電子サインを依頼」→「開始」
- 相手のメールアドレスを入力
⑥ 署名欄の設置
- 「電子サイン」をPDFの署名位置へドラッグ
- 複数名署名も可能
⑦ 送信して署名依頼完了
- 右下「確認して送信」→「送信」
- 「正常に送信されました」と表示される
⑧ 相手の操作(署名者側)
- メールを開き「確認して署名」
- 署名方法は「入力・描画・画像」の3種類
- 「適用」→「タップして署名」で完了
⑨ 完了通知・文書保存
- Adobeのマイページに「署名済み」として保存される
- 相手から署名済PDFを返送してもらう必要なし
4. 電子署名(厳格方式)を使いたい場合
電子証明書を使った高度電子署名を利用したい場合は、Adobeの電子署名機能または ALSOK などの認証サービスを利用します。
5. まとめ:電子サイン/電子署名は「用途で選ぶ時代」
電子契約の普及により、電子サイン・電子署名は業務効率化の中心的ツールとなりました。
・スピード・実務向け → Adobe
・証明力・厳格性が必要 → ALSOKなど認証強化サービス
このように用途によって使い分けることで、より安全で効率的な文書管理が可能になります。
自社の業務内容や顧客層、リスクレベルに応じて、最適な署名方式とサービスを選択してください。
