建設業を営もうとする者は、建設業法施行令で定める「軽微な建設工事」のみを請け負うことを業とする者以外は、建設業の許可を受けなければならない旨の定めが建設業法3条にあります。つまり、軽微な建設工事だけを営んでいる場合には、建設業の許可は不要ということになります。しかし、建設業界全体の発展のためには、様々な変化に対応できるよう、時代の流れにのっていく必要があります。建設業許可申請もその例外ではありません。建設キャリアアップシステムの稼働が開始されたことや、同システムでの「認定能力基準による評価」の向上が経営事項審査における加点対象になった他、JCIP(建設業許可・経営事項審査電子申請システム)が令和5年1月より開始になったことなど、業界あげて官民一体となった様々な取組がなされている所です。日本における少子高齢化問題や慢性的な人手不足を背景とした外国人雇用の問題などの他、建設業界の将来を考えるにあたっては、建設業法第一条の規定にもあるように、建設業を営む者の資質の向上、建設工事の請負契約の適正化等を図ることによつて、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促進し、もつて公共の福祉の増進に寄与することを目指して、今後も努力を続けなければならない時代にあるといえます。
建設業法施行令
(法第三条第一項ただし書の軽微な建設工事)
第一条の二法第三条第一項ただし書の政令で定める軽微な建設工事は、工事一件の請負代金の額が五百万円(当該建設工事が建築一式工事である場合にあつては、千五百万円)に満たない工事又は建築一式工事のうち延べ面積が百五十平方メートルに満たない木造住宅を建設する工事とする。
2前項の請負代金の額は、同一の建設業を営む者が工事の完成を二以上の契約に分割して請け負うときは、各契約の請負代金の額の合計額とする。ただし、正当な理由に基いて契約を分割したときは、この限りでない。
3注文者が材料を提供する場合においては、その市場価格又は市場価格及び運送賃を当該請負契約の請負代金の額に加えたものを第一項の請負代金の額とする。
知事免許と大臣免許
●1つの都道府県の区域内にのみ営業所を設ける場合 = 知事免許
●2つ以上の都道府県の区域に営業所を設ける場合 = 国土交通大臣免許
建設業法
第3条 建設業を営もうとする者は、次に掲げる区分により、この章で定めるところにより、二以上の都道府県の区域内に営業所(本店又は支店若しくは政令で定めるこれに準ずるものをいう。以下同じ。)を設けて営業をしようとする場合にあつては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業をしようとする場合にあつては当該営業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、政令で定める軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者は、この限りでない。
「一式工事」と「専門工事」
建設業法による建設業の建設工事の種類は、まず、「一式工事」と、「専門工事」に区分されます。「一式工事」は、原則として元請業者の立場で総合的な企画、指導、調整の下に複数の下請業者によって施行される大規模かつ複雑な工事とされ、建設業の許可としては「土木一式工事」(土木工事業)と、「建築一式工事」(建築工事業)の2つがあります。
「専門工事」は、27種類に区分され、それぞれの工事内容に沿った建設業に係る許可を受けることになります。つまり、建設業の許可業種全体としては合計29種類があるということになります。
ここでの解釈で注意が必要な点は、一式工事の免許だけでは、「専門工事」に係る部分を自ら無条件で施工できるというわけではなく、あくまでも、500万円を超える工事を下請けに出すような場合には、その専門工事にかかる免許を受けた業者に下請けに出すことができるに過ぎず、500万円以上の専門工事を自ら請け負う場合には、該当する「専門工事」にかかる建設業の許可が必要という点です。一式工事の免許はどんな業種でも施工できるということではありません。
「一般建設業」免許と「特定建設業」免許
建設業許可には、29種類あるということをお話ししましたが、さらにこれらは、「一般建設業」の免許と「特定建設業」の免許に区分されます。
「特定建設業」
発注者から直接工事を請け負う「元請」となる場合において、1つの工事について、下請け工事の発注金額が4500万円以上(建築一式工事にあたっては7000万円以上)となる下請け契約を締結して工事を施工する場合には、「特定建設業」の許可が必要となります。
「一般建設業」
特定建設業以外の工事に係る免許がこれにあたります。
以上のことから、建設業にかかる免許の種類は、知事免許と国交省大臣免許、さらには、「特定建設業」と「一般建設業」に区分されることから、すなわち、
29業種 × 2(知事、大臣) × 2(一般、特定) = 多種類に及ぶということになります。
この複雑さから、一式と特定、特定と大臣などの区分の解釈が、混同してしまい勘違いするケースが多々あるようです。
従って、それぞれの許可要件についても共通の要件もあるものの、知事免許と大臣免許、あるいは、一般建設業と特定建設業ではそれぞれ提出書類や要件が違う点もあるため、混同しないようにしなければなりません。
許可要件 「一般建設業」と「特定建設業」の違い
「一般建設業」
①建設業に係る経営業務の管理を適正に足りる能力を有する者がいること。(経営業務管理責任者等)(主たる営業所に常駐することが条件)
建設業法施行規則7条において、イ)、ロ)、ハ)の3つの区分で要件が定められています。
イ)
(1)建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
(2)建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る。)として経営業務を管理した経験を有する者
(3)建設業に関し6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補助する業務に従事した経験を有する者
※注
経営業務管理責任者は、取締役でなくてもなることができる点(取締役、持分会社の業務を執行する社員、指名委員会等設置会社の執行役、各種組合等の理事等、取締役会の決議を経て具体的に権限委譲を受けた執行役員等)や、令和2年改正により 常勤役員等という言い方統一された点には留意が必要です。
尚、個人事業主の場合は、支配人を登記することで、個人事業主以外の者(支配人)を常勤役員等(経営業務責任者)として条件をクリアできるとされています。
ロ)
常勤役員等のうち一人が次のいずれかに該当する者であって、かつ、財務管理の業務経験(許可を受けている建設業者にあっては当該建設業者、許可を受けようとする建設業を営む者にあっては当該建設業者を営む者における5年以上の建設業の業務経験に限る。以下このロにおいて同じ。)を有する者、労務管理の業務経験を有する者及び業務運営の業務経験を有する者を当該常勤役員等を直接補佐する者としてそれぞれ置くものであること。
(1)建設業に関し、2年以上役員等としての経験を有し、かつ、5年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当する者に限る。)としての経験を有する者
(2)5年以上役員等としての経験を有し、かつ、建設業に関し、2年以上役員等としての経験を有する者
ハ)
国土交通大臣がイ又はロに掲げるものと同等以上の経営体制を有すると認定したもの
②専任技術者を営業所ごとに置いていること。(専任技術者は、各営業所に常駐することが条件)
1 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し、高校の所定学科等(旧実業高校を含む。)卒業後5年以上、又は、大学の所定学科(高等専門学校・旧専門学校を含む。)を卒業後3年以上、実務経験を有する者
2 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し、10年以上の実務経験を有する者
3 1,2と同等又はそれ以上の知識・技術・技能を有すると認められた者
③誠実性を有していること。
④財産的基礎又は金銭的信用を有していること。
最低限度の経済的水準を満たすものとして、500万円以上の金銭の所持証明等が求められる。
⑤欠格要件に該当しないこと。
「特定建設業」
①建設業に係る経営業務の管理を適正に足りる能力を有する者がいること。(一般建設業と同様)
②専任技術者を営業所ごとに置いていること。
(1)許可を受けようとする建設業の種類に応じて国土交通大臣が定めた試験に合格した者、又は建設業の種類に応じて国土交通大臣が定めた免許を受けた者
(2)7条2号イ、ロ、ハに該当し、かつ、免許を受けようとする建設業に係る建設工事で、元請として4500万円以上(昭和59年10月1日以前は1500万円以上、平成6年12月28日以前は3000万円以上)の工事について2年以上の指導監督的な実務経験を有する者
(3)国土交通大臣が1又は2の者と同等以上の能力を有すると認定した者
※注 指定建設業については、1又は3に該当する者に限る。
③誠実性を有していること。(一般建設業と同様)
④財産的基礎又は金銭的信用を有していること。
以下の要件をすべて満たすこと
(1)欠損の額が資本金の20%を超えていないこと
(2)流動比率が75%以上であること
(3)資本金が2000万円以上であり、かつ、自己資本が4000万円以上であること
⑤欠格要件に該当しないこと。(一般建設業と同様)
技術者
●専任技術者(各営業所に常駐)
許可要件にもあるように、建設業を営む者が、各営業所で受ける許可ごとに一定の要件を満たす技術者を常駐させなければなりません。
上記、専任技術者以外の技術者は、「配置技術者」とされ、以下の通りさらに分類されます。
●配置技術者(各施工現場に配置)
「配置技術者」は、施工現場に配置して技術上の管理を行う一定の資格・経験を有する技術者で、「主任技術者」や「監理技術者」がこれに該当します。
●「主任技術者」
「主任技術者」の要件は、一般建設業許可要件の「専任技術者」の要件と同じですが、「専任技術者」が営業所に常駐する必要があることに対して、「主任技術者」は、営業所に常駐するわけではなく、現場に配置される点で違いがあります。尚、主任技術者を配置する場合において、公共性のある施設若しくは多数の者が利用する工作物に関する重要な建設工事(4000万円以上(建築一式工事にあっては8000万円以上))の工事については、配置する技術者は専任性が求められます。(現場に常駐が原則、兼任不可)
●「監理技術者」
「監理技術者」の要件は、特定建設業の許可基準を満たす「技術者」と同じ要件です。
具体的には、下請けに出す施工金額の合計が4500万円以上(建築一式工事の場合は7000万円以上)となる工事現場に配置しなければならない技術者をいい、他の現場との兼任ができないという特徴があります。
※注 配置(兼任の場合と専任の場合)と、常駐(専任技術者としての営業所での常駐と、一定規模以上の工事施工現場における主任技術者と監理技術者の常駐)と、専任(専任技術者の場合の専任と、専任性が求められる場合の配置技術者の専任)はそれぞれその時に応じて意味合いが違いますので留意が必要です。
※専任技術者は、営業所に常駐することが求められており、通常は配置配置技術者等として兼任は認められません。ただし、一定の条件を満たす場合には、例外として兼任が認められることもあるようです。詳しくは、所轄の行政庁担当課等に問い合わせて対応するようにいたしましょう!